今まで共演した中で、一番歌が上手いと思った人は?と、問われたならば、うーん、、、となって、とてもじゃないけれどすぐには答えられないどころか、結局答えることができないでしょう。歌がものっっすごく上手い人、たっくさんいらっしゃいます。
じゃあ逆に一番歌が下手だと思った人は?と、問われたならば、一瞬の間も置かず、「ジャスティス長谷川!!」と即答するでしょう。
ジャスティス長谷川くんは、徳島県徳島市にあるライブハウス、GRINDHOUSEのスタッフであり、本来はベーシストであり、それでいて、ちょいちょいソロで弾き語りライブもしている青年です。
ぼくがGRINDHOUSEで歌わせていただくときは、彼に諸々の仕切りをお願いし、そして彼自身にも出演していただいています。
ひょろりとした見た目とは裏腹に、とても頼りになる、誠実な男です。
ベースギターはなかなか上手いです。
アコギは拙いです。
声は至ってふつうのあんちゃんといった感じです。
MCもそんなでもありません。
そしてそんなこんなは遥か銀河の彼方にぶっ飛んでいってしまうほどに、歌がへたくそです。とんでもなく音痴です。
楽屋で発声練習している時点ですでに大幅に音程が狂っています。
これでボイストレーニングに通っていると聞いたときは、顎がぼとんとGRINDHOUSEのフロアに落ちてしまうほどに驚愕しました。
ボイストレーナーさんも胸を締め付けられるような思いでレッスン料を受け取っていることでしょう。
けれど、長谷川くんのその歌唱力と、彼の人柄の滲み出た、真っ直ぐで澄み切ったメロディーと歌詞が混じり合い、グルーヴすると、不思議なことに(ぼくにとっては不思議なことでもなんでもないのだけれど便宜上)、こちら側(聴き手側)の心の芯に、彼の歌に込めた思いが、がちん!と重く伝わってくるのでした。
ぼくは彼がライブハウスのスタッフであるということが、とても素晴らしいことだと思っています。
そして積極的にステージに上がり続けているということが、とても素晴らしいことだと思っています。
自分もステージに上がってみたいけれど、度胸、自信がなく、いまいちあと一歩が踏み出せない。そんな若者は少なくないと思います。
そんな彼らが長谷川くんのライブを観たならばどうでしょう、長谷川くんより歌がへたっぴな人はなかなかいないでしょうから、きっと、あー、こんなに歌がへたっぴな人でもステージに上がって一生懸命に歌っているのか、そんじゃあぼくもやってみよう!ということになるのではないでしょうか。
長谷川くんのライブは、新しい才能をステージに誘う作用があると思います。
そして、しかし、そうして新たにステージに上がり始めた彼らはやがて、歌で思いを伝えることの難しさ、どうすれば歌に込めた思いをお客さんに伝えることができるのか、という壁にぶち当たるのではないかと思います。
歌唱力というものと、伝える力というものが、ときに、あくまでときに、まったくの無関係であることに気付く人もいるかもしれません。
そのとき、彼らの頭の中にきっとジャスティス長谷川くんの存在が思い浮かんでくることでしょう。
歌うたいとしての長谷川くんの偉大さに気付くことになるでしょう。
長谷川くんは多くの若者達の師となりうる男だと思っています。
一見、ひょいと簡単に跨げそうなくらい低く見えるのに、何故か絶対に足を引っ掛けてしまうハードル。
その魅力を伝える為にはこれほどまでに失礼な物言いを連ねる必要がある男。
ジャスティス長谷川とは、そんな歌うたいです。
さあ、あと一歩をステージに踏み出せずもじもじしている徳島の若者諸君、まず、ジャスティス長谷川のライブを観に行こう!
覚悟しておくように!ほんっっとに音痴だぞ!!大袈裟に言ってるわけじゃないぞ!!
今回は竹原ピストル ワンマン公演ということで、長谷川くんの出演はありませんでしたが、照明担当としてステージを支えてくれました。
ボス、かれこれ随分長いことお世話になっております。
これからもGRINDHOUSEの大将として、徳島音楽シーンのぶっとく重い(心も体も)文鎮として、我々が風に吹き飛ばされないように、押さえ、支えていて下さい。
恩返ししていけるよう、精進します。
相変わらずお上品で、なりよりでございます。笑
2016.1.27.